シンクロトロン放射光を用いた サブミクロン構造体の製作とその光学応用に関する研究

加藤 史樹

本研究はシンクロトロン放射光(SR光)を用いたX線リソグラフィを利用し、光学応用を目的としたサブミクロンスケールの高アスペクト比構造および三次元形状の加工プロセス技術の開発、その技術を利用した光学素子の製作、およびその光学特性評価と実用性の検討を行ったものである。光学応用としてPMMAを加工した可視光用のサブミクロン高アスペクト比回折素子、赤外光用のブレーズド回折素子、反射防止構造、およびNi製のX線望遠鏡ミラー素子の試作を行い、それぞれ特性を評価した。
サブミクロン高アスペクト比回折素子製作においては等倍直接露光法によりライン幅250 nmでアスペクト比8のグレーティングを製作した。製作したグレーティングに波長406 nmの青色レーザを照射し回折効率を計測した。理想断面形状の計算値と計測値との誤差は10%以内であり、製作素子がBlu-ray Disc用回折素子として利用可能であることが示された。
ブレーズド回折素子製作においてはSR光PCT(Plane-pattern to Cross section Transfer = 平面パターン断面転写)法によりピッチ1.48 μm、高さ0.6 μmのブレーズドグレーティングを製作し光ファイバ用光合分波器への適用を検討した。製作した素子形状は目標を達成した。また、合分波器への適用に向け、素子表面の仕上げ粗さの低減など課題を明らかにした。
反射防止構造製作においては可変ギャップ露光法を用い、サブ波長スケールの3次元構造体加工法について検討した。同一マスクを用いプロキシミティギャップ距離を変えて2回照射することにより、サブ波長グレーティング(SWG)の製作に成功した。このサブ波長構造は波長350-700 nmの可視光域の約65%を吸収するフィルタ特性を示した。
X線望遠鏡ミラー素子製作においては、高アスペクト比および反射面の平滑性が要求されており、LIGAプロセスを用いNi電鋳でミラー素子を製作した。ミラー表面の粗さ低減には磁性流体による研磨法を用いた。製作した素子の表面粗さは4 nmであり、X線の反射成分を計測することができた。本製作結果より、人工衛星搭載に向けた軽量のX線望遠鏡開発の見通しを得た。
本研究の成果をまとめ、赤外光、可視光からX線光学応用に至る光学素子のSR光リソグラフィ加工の技術指針を示した。