アメリカ革新主義におけるマイノリティ改革者
:その人的ネットワークの分析

宮下 敬志

アメリカ合衆国では、19世紀末から20世紀初期にかけての工業化や都市化の進展に伴って多くの社会問題が生じていた。これに対処するため、当時の人々は社会運動を組織した。公務員任用制度改革、自治体改革、セツルメン運動などがその代表として知られている。専門的な知識と知性を持つ者が社会全体を合理化し、統制するべきとする進歩主義的な言説を改革者達が用いていた点で、これらの運動は共通している。これをふまえて、当時の社会運動は革新主義運動と、担い手は革新主義者と総称されている。

その一方で、同じく東部白人エリートが担った改革運動であるにもかかわらず、革新主義運動の文脈で分析されてこなかった運動がある。それは、黒人・先住民・非アングロサクソン系移民、植民地の住民などの人種マイノリティ改革運動である。これらの運動は、革新主義運動としてはおろか、単一の人種マイノリティ改革としても論じられていなかった。

そこで、この論文は、革新主義時代の人種マイノリティ改革に横断的に関わった東部都市部の教会エリート(主に先住民改革者)を研究対象として、以下の3点を明らかにすることを目指した。第一に、進歩主義や合理主義に基づいて改革運動を行っていたことを論拠にして、教会エリートも革新主義者であったといえることを立証することである。第二に、教会エリート(革新主義者)の人種差別主義が、人種マイノリティ改革やその政策的実践に対して、決定的な影響を与えていたことを明らかにすることである。第三に、「内国植民地(主義)」という概念を利用しながら、教会エリート(革新主義者)が関与した19世紀末の先住民支配や黒人支配を「プレ植民地の問題」として批判的に捉え直した上で、彼らに対する支配(「内国植民地」支配)と、20世紀の植民地支配(「公式植民地」支配)との間の歴史的な相関性を立証することである

分析の結果、第一に、政策内容に革新主義的な合理主義がみられる点や、新時代の専門知識を代表する社会学者などの意見も重用をしていた点で、彼らを革新主義者とみなせることがわかった。第二に、先住民や黒人の「劣等性」は、数世代では改善不可能であるとみなし、有色人種から政治的権利を剥奪することを支持していたことがわかった。第三に、彼らが考案した先住民や黒人などの国内人種マイノリティの支配の方法論は、教会エリートの手によってフィリピンやプエルトリコ支配への応用が目指されたことがわかった。