鉄電解法によるリン除去と生物処理への適用に関する研究

森泉 雅貴

近年,我が国では湖沼,内海,内湾などの閉鎖性水域や中小河川での水質汚濁が大きな問題となっている。この水質汚濁の要因の1つとして生活排水,特に生活雑排水があり,下水道や農業集落排水処理施設を含む合併処理浄化槽の普及さらには住民の生活習慣の改善などが必要とされている。一方,閉鎖性水域の環境保全としては,これまで進められてきたBODの処理を中心とした処理だけでは不十分であり,窒素やリンなどの栄養塩類の除去が必要とされている。

浄化槽についていえば,BODおよび窒素除去は小規模の個別住宅用施設においても普及しつつあるが,リン除去に関しては実用化されていない。本研究では,小規模施設にも適用できる新しいリン除去技術を研究した。研究の対象とした鉄電解法は,小規模浄化槽をはじめとする生物処理に適用可能であり,またリン添加量の制御性がたいへんすぐれていることが明らかになった。

これまでの鉄電解法では,酸化皮膜の形成により鉄溶出が抑制されることが知られており,そのため安定した鉄溶出が困難であった。本研究では,この困難を回避するために電極の極性を定期的に反転させることとし,これによって長期間安定した鉄溶出およびリン除去(80%以上)が可能となった。

鉄電解法を,生物処理法すなわち生物膜法と活性汚泥法に適用した。生物膜法については,生物ろ過法の実験施設および接触ばっ気法の実施設に適用して,リン除去に関する最適条件を検討し,6ヶ月間の安定した処理性能を得ることができた。活性汚泥法への鉄電解法の適用について,室内実験により検討した結果,鉄電解は活性汚泥の微生物活性を阻害しないこと,溶出した鉄は活性汚泥に取り込まれ水中のリンを除去することなどが明らかになった。さらに,活性汚泥法を用いている食品製造工場の排水処理施設に鉄電解法を適用し,リン除去性能の向上を示した。